研究概要 |
本研究では,診断用集積チップの構築を目標に,ヒューマン・インターフェース・システム構築の観点から,デバイス・プロセス・材料に対する諸課題を解決することを目指している。具体的には,ポリマーやガラスを材料とする生化学物質を含む液体の操作・反応系と,シリコンやガラス基材上に構築した各種センサーなどの検出系や温度・電場・流体等の制御系をインテグレーションする。その際,異種材料間の接合方法,材料光学特性を考慮したチップデザインなどの検討を行う。更に,表面処理によって核酸,蛋白質,血球などの吸着制御を試みる。これらの研究を基に,多数の分析ユニットの並列処理,あるいは異なる操作の組み合わせにより,簡易血液診断チップを実現するための基盤技術の研究を行っている。 本年度は,ポリマー・ガラス材料を用いた接液部の微細加工を行った。ポリマーの材料としては,導電性が低く,光の透過率は高く,成形が容易で安価なシリコン系ポリマーであるポリジメチルシロキサン(PDMS)を用い,ファブリケーションは,ソフトリソグラフィーによった。主要な成果を以下に示した。 (1)微量・定量・並列操作方法の開発:(a)チップ上での微量液体の新規な秤取法の提案と等量分配系の構築,(2)ユニット操作の集積化によるシーケンシャル処理の実現:(b)水性二相分配系による細胞の連続分離法の提案,(c)分離した細胞からの核酸の抽出・精製の自動化,(d)キャピラリーゲル電気泳動によるDNA断片の分離・分取法の実現,(3)チップ表面の(部分)修飾・制御法の開発:(e)ポリマーチップ上でのPCR反応に遺伝子増幅分離系の構築,(f)酵素反応による吸光法による生化学分析,(g)オンチップクロマトグラフィーシステムの構築とこれによる血清蛋白の分離定量法の提案,(h)抗原抗体反応による血清中の蛋白質の定量法の開発など。
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