半導体集積回路の高速化の障害となっているチップ内のグローバルクロック配線問題を解決するために、超高速ワイヤレス配線を提案している。グローバルクロック送信回路から発信されたクロック信号は送信アンテナからシリコン基板を経て各回路ブロックの受信アンテナで受信され、回路間の信号の同期をとる。実験サンプルとしてとして、シリコン基板上に層間絶縁膜を介してアルミニウム薄膜を形成し、アンテナパターンを加工形成する。 本年度は、電磁波伝送シミュレータとして、FDTD(Frequency Difference Time Domain Method)による3次元電磁界計算と有限要素法による3次元電磁界計算の両方を検討した。シミュレーション結果を実験結果と比較して検討した。 シリコン基板上の送信アンテナと受信アンテナの距離による送信電力の減衰は、実験値とシミュレーション値がよく一致した。これはシリコン基板抵抗率が10Ωcmであり、損失をもつからである。次に、アンテナが回転した場合の減衰についても検討した。回転角が60°以内ならほとんど減衰が無視できることが分かった。さらに、送受信アンテナ間に集積回路の金属配線が存在する場合は干渉による減衰が予想されるが、配線本数により、減衰量が変わり、配線のトータルボリュームに依存して干渉が起こることが分かった。
|