研究課題/領域番号 |
13025234
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
吉川 公麿 広島大学, ナノデバイス・システム研究センター, 教授 (60304458)
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研究分担者 |
水野 正之 日本電気(株), システムデバイス研究所, 主任研究員
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キーワード | アンテナ / 電磁波 / シリコン / 伝送線路 / 集積回路 / Sパラメータ |
研究概要 |
本研究ではシリコンULSIに対応したグローバルインターコネクトとして集積化アンテナによる電磁波伝送を提案し、実証した。今年度はシリコン基板上のダイポールアンテナの電磁波伝送特性をマクスウェルの方程式に基づく電磁界を計算することにより解析し、実際にSi基板上にダイポールアンテナを設計試作し、電磁波伝送特性を購入したベクトルネットワークアナライザでSパラメータを測定解析した。その結果、標準的な半導体集積回路に用いられるシリコン基板は抵抗率が10Ωcmであるが、6-26GHz帯における伝送損失が大きいことが明らかになり、シリコン基板上に形成したダイポールアンテナから放射された電磁波はシリコン基板を導波路として伝搬していることが明らかになった。しかしシリコン基板による損失を解決するためにシリコン基板にプロトン注入を行った。その結果、シリコン基板抵抗率を数MΩcmまで高くすると、伝送損失が大幅に低減できることがわかり、シリコンチップ内でもチップサイズに相当する数cmの長距離まで信号伝送できることが明らかになった。しかし、プロトン注入は高エネルギーイオン注入装置を必要とし、高価なプロセスとなるために実用性に乏しい。このため、シリコン基板の抵抗率を変えて電磁波伝送を評価した。その結果、シリコン基板は抵抗率数kΩcmから最低76Ωcmまで下げてもアンテナの伝送特性にはほとんど影響がないことを明らかにし、実用レベルに持ち込むことが可能であることを示した。この成果は国際固体素子材料会議で発表した。 さらに、シリコンチップ間の信号伝送についても集積化アンテナによる電磁波伝送を試みた。これは標準的な抵抗率10Ωcmを持つ2つのシリコンチップにそれぞれダイポールアンテナを形成し、チップ間に隙間をあけてアンテナ間距離を変えた場合の信号の減衰を調べた。その結果シリコンチップ間に隙間があって電波がいったん空気中に飛び出しても、送信アンテナからでた正弦波信号は受信アンテナに伝送できることを初めて明らかにした。この成果は国際固体素子材料会議に発表した。
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