研究概要 |
(1)サブピコ秒(150fs)パルスレーザ励起による自色光ポンププローブ法を用いてInGaN量子井戸構造における過渡吸収分光を行い,励起子の局在効果(吸収飽和)とピエゾ電界効果(内部電界スクリーニングによる吸収係数の増大)を分けて評価することに初めて成功した。その結果,井戸幅が狭く活性層のIn組成の大きな試料ほどバンドフィリングによる吸収飽和が顕著に観測され,局在の効果が大きくなることを明らかにした。 (2)近接場光学顕微鏡(SNOM)による青色発光InGaN単一量子井戸構造の18Kにおけるフォトルミネスセンス(PL)の超局所マッピングを行った。PL相対強度は,1〜6倍の範囲で,ピーク波長は470〜490nmの範囲で揺らいでいることが観測された。この両者の間には相関があり,長波長ほど発光強度が強い傾向にあることが分かった。この試料の低温でのPL内部量子効率は,ほぼ1に近いと考えられているので,相対強度の強い面内揺らぎの起源として非輻射再結合課程の面内分布というよりは,光励起によって生成されたキャリア・励起子がポテンシャル揺らぎによって波長の長い低エネルギー領域に拡散・局在したために生じた可能性が示唆された。 (3)ラジカル分子線エピタキシー法によってZnCdO三元混晶薄膜を作製した。この試料からは,強い青色発光が観測され,しかも発光の様子を微視的に観測すると,発光波長と強度に揺らぎが見られた。この理由を調べるために組成分析を行ってみると、六角形状の粒界近傍でCd組成が大きくなるという組成揺らぎが生じていることが分かった。Cd組成の大きい所ではポテンシャルが低くなるため、励起子がこのような位置に局在して高効率の発光をするというInGaNと類似またはそれを強調したような効果が生じているのではないかと示唆された。
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