研究概要 |
階段型屈折率分布半導体アレイ導波路を用いた波長分割光スイッチの実現を目的として研究を行った.従来型のアレイ導波路格子では,各アレイ導波路の位相差を得るために異なる導波路長を与える設計となっている.このとき波長間隔が狭くなると行路長差を大きく取る必要があり,多チャンネル化の際,素子寸法が大きくなってしまう.一方,我々は導波路間の位相差を変えるために,各導波路があらかじめ異なる屈折率を有する階段型屈折率分布アレイ導波路を設計した.各アレイ導波路の屈折率差を大きくすることによって位相差を大きくすることができ,素子長の短縮化や多チャンネル化が可能となる.そしてそれぞれの導波路の屈折率を電界印加など動的に変化することによって光偏向を行う1×N型空間光スイッチへの応用や,また波長多重された光信号を波長ごとに動的に出力ポートを切り換える波長分割型光スイッチが可能となる. 本年度,アレイ導波路領域の片側のみにワイドマスクを配置した非対称なマスクパターンを用いたMOVPE選択成長によるアレイ導波路の層厚変化より,屈折率段差を見積もった.成長温度620℃,成長圧力80Torr,アレイ導波路本数=16本,幅w=3.4μm,間隔d=2.6μm,ワイドマスク幅はWw=260μmにおいて,層厚変化は1本目と16本目の導波路において,約332nm,それより屈折率段差は,約0.9%と見積もられた. さらに,階段型屈折率分布アレイ導波路を波長分割光スイッチに応用するにあたり,波長分波特性の理論計算を行った.また,初期実験として遠視野像-入射波長依存性の測定を行い,波長1520〜1580nmにおいて約3.4°の回折角の変化を得た.そしてワイドマスク幅と屈折率差,回折角の依存性を実験的に確かめた.
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