本研究では、硬骨魚類メダカの排卵を指標として、生殖機能への影響が懸念されている内分泌攪乱物質を検出できるかどうかについて検討することを目的とした。その結果、以下のような成果が得られた。 (1)メダカ卵巣からくり抜いた濾胞を用いた試験管内排卵評価系を確立した。この実験系を利用して、内分泌攪乱物質9種(cis-ペルメトリン、ベンゾフェノン、p-ノニルフェノール、酢酸トリブチルスズ(IV)、フタル酸ブチルベンジル、ブチルヒドロキシトルエン、アジピン酸ジエチルヘキシル、フタル酸ジエチルヘキシル、ビスフェノールA)の排卵に及ぼす影響を調査した結果、酢酸トリブチルスズ(IV)は顕著な排卵障害をもたらした。 (2)排卵の実行に中心的な役割を果たすと予想される3種のマトリックスプロテアーゼ(MT2-MMP、ゼラチナーゼA及びゼラチナーゼB)の濾胞内発現レベルに及ぼす内分泌攪乱物質の影響について調査した。RT-PCR解析の結果、ゼラチナーゼA及びゼラチナーゼBではmRNAレベルに変動はなかったが、MT2-MMP mRNAは全く検出されなくなることが判明した。 以上の結果から、本研究の試験管内排卵実験系が内分泌攪乱物質の探索に利用できる可能性が示唆された。
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