研究概要 |
本年度は、神経活動依存的なc-fosと脳由来神経栄養因子(BDNF)遺伝子発現誘導に与える、内分泌攪乱物質の複合的効果を検討した。また、同時に、甲状腺ホルモンのシナプス形成に与える影響を、ラット大脳皮質初代培養系を用いて検討した。 1.神経活動攪乱に関する複合的作用 すでにマウス小脳顆粒細胞初代培養系で、ピレスロイド系殺虫剤permethrin、及びDDTがCa^<2+>流入依存的なc-fos, BDNF遺伝子誘導を抑制することを認めている。そこで、両穀虫剤、及び、ビスフェノールA、DESを同時に加えてその影響を検討した。その結果、これら物質の遺伝子発現誘導及び細胞内Ca^<2+>流入に相加的な阻害効果が認められた。これは、脂溶性化学物質がイオンチャネルなどの機能性に共通に影響を及ぼすことを示しており、今後、内分泌攪乱物質の複合的効果の評価に有効と思われる。 2.甲状腺ホルモンの効果 ダイオキシンなどは甲状腺機能低下を引き起こすが、甲状腺ホルモン(TH)が脳・神経系発達にどのように関わっているか不明である。ラット大脳皮質初代培養系にTHを加えると、形成されるシナプス数が増加した。この際、神経突起の成長が促進され、また、シナプトフィジンmRNA合成も活性化した。さらに、グルタミン酸レセプターNR2の発現も活性化された。これら発現はシナプス形成と関係しているものと考えられ、THのシナプス形成に与える影響を検討する上で、この解析系は有効であることが明らかとなった。
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