最近、スギ花粉やハウスダストを抗原とするアレルギー性鼻炎が著しく増加してきており、その一つの原因として、内分泌撹乱物質の摂取を考えた。そこで26項目の内分泌撹乱物質うち、IgE産生亢進するものがないか検討した。まず環境庁、建設庁で進められている「河川水中の外因性内分泌撹乱物質の実態概況調査」の対象品目の中から、ビスフェノールA、ノニルフェノール、スチレンモノマー・4-ニトロトルエン、フタル酸ジシクロヘキシル、ジブチルフェノールの7項目をまず検討した。健康ヒト末梢血からリンパ球を分離し、IL-4、抗CD40抗体、各種内分泌撹乱物質(6点の濃度設定:1x10^<-5>Mから1x10^<-10>)とともに14日培養し、細胞上清を回収、上清中のIgEをELISA法にて測定した。培養後の末梢リンパ球を回収し、トリパンブルーによる細胞障害性を調べた。その結果、各種内分泌撹乱物質による末梢リンパ球に対する細胞障害性は、14日間の培養では認めなかった。7項目の内分泌撹乱物質のうち、ノニルフェノール:1x10^<-9>Mで有意な亢進を認めたが、その他の濃度では有意な亢進を認めなかった。それ以外のビスフェノールA、スチレンモノマー、4-ニトロトルエン・フタル酸ジシクロヘキシル、ジブチルフェノールの6項目は、IgEの産生を変動させなかった。しかし症例ごとで検討すると、20%から35%の症例頻度で約20%以上のIgE産生亢進が認められた。この頻度は、アレルギー性鼻炎の罹患率と類似しており、内分泌撹乱物質への反応性、しいては遺伝子多型へと発展しうると考えた。
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