研究概要 |
サルは生理的に極めてヒトに近い特徴をもつことから内分泌攪乱物質のヒトへの影響を調べるうえでのモデルとして有用である。 胎児期は内分泌攪乱物質の影響が大きいと考えられるため、母ザルに内分泌攪乱物質を投与して胎児移行や影響をみた。投与物質を定量して対照と較べると、フタル酸エステル、ビスフエノールA、植物エストロゲンなどは胎盤を透過して胎児に移行した。ダイオキシン類似物質をサルに投与すると脳を含む各種の臓器で関連遺伝子群の変動が認められた。Cyp1A1やGSTpiの変動が大きかった。変動する遺伝子群をクローニングして解析後保存し、将来のDNAチップによる影響評価に備えることができた(飯田景子その他、環境ホルモン学会、2001年12月つくば市)。またその他の薬物代謝酵素についても比較検討して霊長類の特性を推定した。 内分泌攪乱物質の食品や体内への混入は環境から来ていると疑われる。フタル酸エステルの霊長類への汚染を調査した。フタル酸エステルのサルにおける取り込みは野性群と飼育群ともに生じていた(Asaoka et al.1999,2000)、ヒトへの影響を調べるため飲食品中のフタル酸エステルの調査を日本と韓国を比較して行った(Yano K., et al. Bull. Environ. Contam. Toxicol., in press,2001)。日本における飲食品は韓国のものより高濃度で検出された。フタル酸エステルの生産量と汚染度には関連があると予測された。サルでの内分泌攪乱物質の汚染調査を進めるためアジアにおけるサルの汚染調査のため血液による予備的な調査を行い野生サル約20個体の血液試料を分析した。 これらの結果より内分泌攪乱物質はヒトの胎児の脳に入って異常な遺伝子発現を引き起こす可能性が高いことが外挿された。
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