内分泌攪乱物質による生殖毒性評価システムの構築:構造生物学・細胞生物学的リアルタイム評価法の確立

2001 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 13027241
• 研究種目: 特定領域研究(A)
• 研究機関: 京都大学
• 研究代表者: 眞鍋 昇 京都大学, 農学研究科, 助教授 (80243070)
• 研究分担者: 宮本 元 京都大学, 農学研究科, 教授 (00026618) ; 宮川 恒 京都大学, 農学研究科, 助教授 (10219735) ; 杉本 実紀 京都大学, 農学研究科, 助手 (20243074) ; 九郎丸 正道 東京大学, 農学生命科学研究科, 助教授 (00148636) ; 奥田 潔 岡山大学, 自然科学研究科, 教授 (40177168) ; 木曾 康郎 山口大学, 農学部, 教授 (10142374)
• キーワード: 外因性内分泌攪乱物質 / 核磁気共鳴イメージング / 三次元形態解析 / 哺乳類 / 胎仔 / オーファン受容体 / 受容体ノックアウト / リアルタイム解析

研究概要

人類が創り出した農薬、医薬、食品添加物などの多くが内分泌攪乱物質として人類の生存を脅かしている。本研究は、生殖生理学に関わる新技術開発や生殖子の選抜機構研究を進め、新規な原理に基づいたリアルタイムに生殖毒性を観測・評価できる技術システムを構築し、従来法とは比較できない精度で速やかに生植毒性を評価できる新規技術を確立することで、様々な化合物の生殖毒性を的確に評価できる未来を開拓する基盤技術を開発するものである。すなわち、構造生物学および細胞生物学的視点から内分泌撹乱物質とホルモン受容体の結合様式、受容体分子の立体構造変化等を観測し、環境系に存在する様々な化合物の生殖毒性をリアルタイムに評価するシステムを下記のように確立している。(1)動物を麻酔下に生体NMR(NMRシグナルを定量検出できる特殊プローブの開発を進めた)に保定し、胎児におけるNMRシグナルを部位特異的にリアルタイムに検出できる測定アプリケーションの作成と最適測定条件の決定を行った。(2)毒性発現機構の生殖生理学的解明をすすめるために、オーファン(孤児)受容体に様々な構造変異を遺伝子工学的に誘導し、化合物/受容体の相互的結合特性をNMRにて観測して分子構造学的に毒性を予測する技術を開発している。今年度は、変異遺伝子を胚に導入して発現させる実験系を確立した。併行して、生殖子(卵母細胞)は遺伝子に制御された細胞死によって選択されているが、これを制御する新規な細胞死受容体(申請者らが発見した卵胞顆粒層細胞特異的アポトーシス受容体)を介した細胞死シグナル伝達機構を明らかにし化合物の影響を分子レベルで評価する系の開発を進めた。雄では、精巣セルトリ細胞のプロラクチン-インヒビンB受容体複合体が精子形成過程におけるアポトーシスを支配的に制御していることを見出し、この分子機構の解明を進めた。

研究成果

• [文献書誌] Noboru Manabe et al.: "In vivo noninvasive nuclear magnetic resonance (NMR) technique for assessment of teratogenicity induced by chemicals"Chemical Engineering. 47・1. 110-114 (2002)
• [文献書誌] Satoko Wada, Noboru Manabe et al.: "TRAIL-decoy receptor-1 disappears in granulosa cells of atretic follicles in porcine ovaries"Journal of Reproduction and Development. 48・2. 167-173 (2002)
• [文献書誌] Satoko Wada, Noboru Manabe et al.: "TRADD is involved in apoptosis induction in granulosa cells during atresia in pig ovaries"Journal of Reproduction and Development. 48・2. 175-181 (2002)
• [文献書誌] Hitoshi Okamura, Noboru Manabe et al.: "Protein tyrosine kinase expression in the porcine ovary"Molecular Human Reproduction. 7・4. 723-729 (2001)
• [文献書誌] Eiichi Hondo, Noboru Manabe et al.: "Molecular cloning and expression of suppressor of potassium transport defect 3 (SKD3) in rat testis"Journal of Reproduction and Development. 47・2. 173-180 (2001)
• [文献書誌] Minako Kiso, Noboru Manabe et al.: "Abnormal accumulation of luteal bodies in ovaries of the senescence accelerated mouse (SAM)"Journal of Reproduction and Development. 47・2. 153-164 (2001)
• [文献書誌] Mizuho Nakayama, Noboru Manabe et al.: "Changes in localization of type I, III and IV collagens and their mRNA expression during follicular atresia in bovine and porcine ovaries"Journal of Reproduction and Development. 47・1. 27-36 (2001)
• [文献書誌] Noboru Manabe et al.: "Teratosis induced by retinoids relates to apoptotic cell death in mouse embryos. In : Miyamoto H, Manabe N (eds), Reproductive Biotechnology : Reproductive biotechnology update and its related physiology"Hokuto Publishing Co., (Kyoto, Japan). 424 (2001)