研究概要 |
内分泌撹乱物質(Bisphenol.A(BPA)や17β-estradiol(E2)、Nonylphenol(NP)等)が塩阻止率99.5%以上の超低圧逆浸透膜によって効率的に分離されることは前年度までに報告した。一方、塩阻止率が55%程度と比較的低い低圧逆浸透膜については、物質にもよるが20〜85%程度の除去率となり、とくに酸性域でのBPAとE2の除去率はそれぞれ約20%、約60%であった。しかし、E2あるいはBPAをフルボ酸溶接(2.5mg TOC/L)、フミン酸溶液(10mg TOC/L)、下水二次処理水に添加した場合、それらの除去率は上昇し、とくにフミン酸溶液中のE2はほぼ100%除去された。一方BPAについても同時の傾向がみられたが、フミン酸溶液中のBPA除去率はBPA単独の場合(除去率約40%)と比較して約20%上昇するにとどまった。HPLCを用いて分子量分画を行ったところ、フミン酸の分子量は10,000〜30,000,下水二次処理水中有機物の分子量は200〜15,000、フルボ酸の分子量は約300であった。フミン酸は同膜によりほぼ100%除去されることから、これらの結果は環境水あるいは排水中の内分泌撹乱物質がフミン酸などの共存物質に収着され、その後膜により分離される機構を示唆されている。しかしながら、フミン酸のような有機物と内分泌撹乱物質の同時挙動については今後さらに検討する必要がある。 また、内分泌撹乱物質の1種でもっとも毒性が強いダイオキシン類に関し、底質間隙水(孔径0.1μのempore diskによりろ過したもの)を対象に精密ろ過(0.2μm)による処理を試みた。処理前の供試液中のPCDD_s,PCDF_s,Co-PCB_sをあわせたダイオキシン類の毒性当量は52pg-TEQ/Lであったが、膜分離後は0.0028 TEQ/Lとなり、ほとんどのダイオキシン類がほぼ分離された。このことは底質間隙水中のダイオキシン類の多くが1μm以下の微量粒子に付着した状況にあり、粒子とともに膜分離されたことを示している。
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