内分泌撹乱を生起する可能性がある化学物質に対して、多方面から調査研究が進められているが、それらの個別の化学物質に加えて、「消毒副生成物」などの混合物についても検討を行う必要がある。本研究の主たる目的は、塩素処理水のエストロゲン様作用についても、その「中間体」や「生成能」を含め、水道水のトリハロメタン問題と同様な概念を形成していくことができるかを検討することである。 主たる検討結果を以下に示す。1)塩素処理水のエストロゲン様作用の強さの経時的変化を測定した。なお、この実験は、自然水中に混入しうるエストロゲン様作用物質を含まない必要があるため、試薬フミン酸を用いて行った。結果として、いったん生成した作用が次第に増大していくことを見いだした。また、高pHおよび加熱条件のような、加水分解がさらに進むような場合には、増大したエストロゲン様作用が、再度低減に向かうことも見いだした。これらの結果、エストロゲン様作用生成能、およびエストロゲン様作用中間体を定義することができた。2)クロロフェノール類を中心とする副生成物を測定し、上記の変化との対応を検討したが、対応しているとはいえなかった。3)17β-エストラジオールなど個別化学物質を含む水道原水を対象とし、塩素処理によるエストロゲン様作用の時間的変化を測定した。 以上を総合して、水中エストロゲン様作用の構成成分と塩素による変化について把握することに成功するとともに、水道水の試験のための適切な濃縮方法を呈示した。
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