(研究計画)有性生殖を行なう生物種において個体の遺伝的な性は受精時に決まり、それが生殖腺の性を決め、生殖付属器官や二次性徴、さらに脳、行動などの表現型の性が決定されて性が確立すると言われている。内分泌撹乱物質などの汚染物質が環境問題として重要視されている昨今、魚類の雌化、あるいは奇形魚の殆どを占める骨形成異常について遺伝子、蛋白質レベルでの解析を行い、環境要因に敏感に応答する因子を用いたバイオセンサーを構築する事を本研究の目的とした。 具体的な計画は、【1】性決定を制御する因子の序列化と探索、【2】性決定・確立に関与する遺伝子取得とマッピング、【3】骨形成過程に関与する遺伝子シグナル、細胞分化ステップの同定、【4】外的要因の受容体タンパク質を用いた環境バイオセンサーの開発。 (研究経過および成果)性決定因子の序列化には至っていないが、ゼブラフィッシュ、メダカ初期胚における卵膜の可塑性をプロテアーゼ処理により向上させることに成功し、発生時における遺伝子発現プロファイリング、アポトーシス評価が可能になった。また、ヒトアポトーシス抑制遺伝子(bc1-2)を導入したトランスジェニックゼブラフィッシュが骨形成異常を起こす点も明らかにし、骨形成異常、性決定と内分泌撹乱物質の関係を調べる基礎を築くことができたと認識している。今後、特に発生段階における性決定・骨形成におけるアポトーシスの役割を調べ、内分泌撹乱物質の関連を明らかにすることは、上述の通り環境問題、発生・分化、再生医療を論ずる上でも重要である。
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