研究概要 |
ダイオキシン様内分泌撹乱物質の作用の生物種差の問題を解決する一つの方法として、生物種独自のアリルハイドロカーボンレセプター(AhR)を持つバイオアッセイ系を構築し、ダイオキシン様作用物質のAhR系活性化の生物種差を明らかにすることを本研究で試みる。その最初の段階として本研究では、ヒトおよびマウスのAhR,Arntを発現する出芽酵母アッセイ系を樹立し、両種のAhR系活性化についての種差を考察した。 MILLER博士の方法に準じてヒトに代えてマウスのAhRとArnt遺伝子を染色体に持つ酵母を作製した。さらにCyp1A1プロモーターにβ-ガラクトシダーゼ遺伝子を結合したレポータープラスミドを酵母に導入した。 その結果、この酵母によってベータナフトフラボン、ベンツピレン、インディルビン、3_メチルコラントレンなどによるマウスAhr/Arnt系の活性化を測定できることがわかった。マウスまたはヒト遺伝子を持つ酵母を用いて、それらの化学物質によるAhR/Arnt系活性化を比較した結果、活性化はマウスとヒトで同程度か、マウスの方がやや強かった。ArntのQ-rich領域が欠失すると活性化が約1/100に落ちた。また2種類の組込型ベクターを使用し遺伝子組込み位置の異なる(染色体11番と3番)2種類の酵母を作製したが、3番染色体に組み込んだ方がわずかに活性化が強かった。 本結果は、動物実験からヒトへの内分泌攪乱物質のリスクを評価する上で重要である。引き続きヒト・マウスの他、ハムスターやモルモットなど生物種の数を増やし、アッセイ用酵母ライブラリーの充実をめざす。さらに河川水や大気浮遊塵などの環境サンプルをアッセイし、動物種差を調べる予定である。
|