扁形動物のプラナリアは線虫よりさらに原始的な生物と考えられているが、環境の変化に非常に敏感であり、また、分裂によって増殖する無性生殖と精子と卵を用いて増殖する有性生殖を使いわけるというユニークな生物である。自然界では、季節によって生殖方法が変化すると考えられているが有性生殖を行うプラナリアを食べさせることによって実験的に有性生殖を行う有性化個体へと性誘導させることもできる(Fig.1)。現在のところ、この性誘導の機構は全くわかっていないが、私はプラナリアの性形成にステロイド系物質が関与しているのではないかと考え、プラナリアに内分泌撹乱物質を作用させ、影響を調査している。また、線虫にも存在したステロイドホルモン受容体(SHR)遺伝子の探索を行い、分子生物学的な側面からもアプローチを試みている。リュウキュウナミウズムシというプラナリアの無性個体、有性化個体を様々な濃度のビスフェノールA水溶液中で飼育し、外部形態・内部組織の観察を行った。 今回の結果からビスフェノールAが0.25ppm以上の濃度の水中では生存できないことがわかった。他の生物種では、この濃度で異常が引き起こされたという報告はなく、この事からもプラナリアがモデル生物に適していると考えられる。プラナリアは非常に容易かつ安価で飼育することができ、汚染された水を数ml用意するだけで簡単に分析を行うことができる。今回の研究がプラナリア内分泌学の発展、生殖方法転換機構の解明につながると期待している。
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