本年度ATPが結合することにより開口するイオンチャネルであるP2X受容体が、ステロイド感受性のセンサーになり得るかどうか検討したが、本年度の研究では、P2X受容体を用いたステロイドセンサーの作成には至らなかった。しかし、ステロイドのイオンチャネルへの影響を調べていくうちに、外向性整流性CIチャネルがステロイドにより抑制されることを見出した。外向整流性CIチャネルは多くの上皮細胞に発現して水・イオン輸送に関わっているイオンチャネルである。このイオンチャネルの分子実体については、現在議論のあるところであるが、上皮細胞株HT29に対してパッチクランプ法を適用して、in side-out modeで外向性整流性CIチャネルを観察し、ステロイド(estradiol)を投与するとチャネル活性の抑制が認められた。この抑制についてはステロイドがイオンチャネルのイオン透過路を塞ぐように結合することにより電流を阻害するものと考えられた。現在、既にクローニングされ分子実体が明らかになっているCIチャネルに対してステロイドの効果があるか、CIチャネルがステロイドセンサーとして利用し得るかどうか検討を行っている。また、内分泌撹乱物質の範疇からは逸脱するが、水銀イオンが水チャネルのファミリーに属するAquaporin6(AQP6)の制御に関わっていることが知られている。AQP6が水銀イオンに対するセンサーになり得るかをAQP6をアフリカツメガエル卵母細胞に発現させパッチクランプ法を用いたシングルチャネル記録を行うことにより検討した。AQP6を卵母細胞に発現させ、パッチクランプ法を用いて電流を観察し、水銀を投与するとチャネル電流の活性化が認められた。この電流は未発現細胞では観察されず、AQP6自体が水銀の作用により開口するものと考えれた。したがってAQP6は水銀に対するセンサーになると考えられた。
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