研究概要 |
環状化合物を構築する際には,分子内の求核成分と求電子成分との(付加もしくは置換)反応により結合形成を試みるか,あるいは2分子が反応して同時に2箇所の結合を作る環化付加反応を用いるのが一般的である.今回そのいずれの反応においてもアート錯体が有効であることを見いだし,アート錯体の特徴である官能基(化学)選択的な性質を最大限活用した多元素環状化合物の構築への展開を検討した. たとえば、ヨードエポキシド体を用いたハロゲン-メタル交換反応と,それに続く分子内エポキシド開環反応について,種々の金属試薬を用いて検討を行ったところ,金属試薬としてnBuLiを用いると,5-exo閉環体が,EtMgBrを用いると,6-endo閉環体が選択的に生成した.また,金属試薬としてMe_3ZnLiを用いた場合,5-exo閉環体と6-endo閉環体の生成比が4:96となり,6-endo閉環体が主成績体となった.これに対し,当研究室で開発された高配位型亜鉛アート錯体を用いた場合,配位子の種類に関係なく,生成比がMe_3ZnLiを用いた場合とは完全に環化方向が逆転した.
|