研究概要 |
本年度は、まず、ニトリルオキシドの分子内1,3-双極子付加環化反応を用いた合成戦略によって、マイトマイシンと同様な作用機序によって高い抗腫瘍性を示すFR-900482類縁化合物の光学活性体の合成を行った。酒石酸より誘導した光学活性な一級アルコールと、ニトロベンゼンホニル基で活性化した多置換アニリンを光延反応を用いて縮合し、数段階の変換を経てオキシムに変換した後に次亜塩素酸ナトリウムで処理してニトリルオキシドを発生させた。望みの環化反応は立体選択的に進行し3環性化合物が良好な収率で得られた。しかしながら、環化反応の位置選択性の制御には1,3-双極子受容体であるオレフィン部位にカルボメトキシ基の導入が必須であり、この置換基の除去およびFR-900482誘導体へと導くその後の変換に多段階を要した。そのため、全く新しい手法による骨格構築を目指して再度合成戦略を練り直すこととした。まず、FR900482およびマイトマイシン類の基本骨格に含まれる8員環ベンゾアゾシン骨格の構築法に関して、末端アルデヒドを有する芳香族ニトロ化合物の還元的ヒドロキシルアミノ化を用いる合成計画を立てた。本年度は、まず、環化前駆体の簡便な合成法の開発を行った。その結果2-ニトロフェニルアセチレンに対するピロリジンの共役付加反応を用いた新規アリールメチルケトンの合成法を開発することができた。また、得られたアリールメチルケトンのベンゼン環上のニトロ基を還元することによって、新規2-置換インドール合成法へと展開することができた。
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