金属含有多元素環状化合物の創製と反応

2002 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 13029031
• 研究機関: 東京工業大学
• 研究代表者: 岩澤 伸治 東京工業大学, 大学院・理工学研究科, 教授 (40168563)
• キーワード: アゾメチンイリド / 多環性インドール / [3+2]付加環化反応 / タングステンカルボニル / 不安定カルベン錯体 / 1,2-アルキル移動

研究概要

すでに我々は、o-エチニルフェニルケトン誘導体に電子豊富オレフィン存在下、触媒量のタングステンカルボニル錯体を作用させると、o-エチニルフェニルケトン誘導体とタングステンカルボニル錯体から金属部位を有するカルボニルイリドが生成し、これが電子豊富オレフィンと[3+2]付加環化反応、続いて生じるカルベン錯体部位がC-H結合挿入反応を起こし、多環性化合物を与えることを見いだしている。
今回我々は、N-(o-エチニルフェニル)イミン誘導体を用い同様にタングステンカルボニル錯体との反応を行えば、タングステンにより求電子的に活性化されたアルキン部位へのイミノ窒素の求核攻撃により、金属部位を有するアゾメチンイリドが生成し、これが電子豊富オレフィンと[3+2]付加環化反応を起こすことにより、多環性インドール誘導体が得られるものと考え検討を行った。
その結果、N-(o-エチニルフェニル)イミン誘導体としてベンズアルジミンあるいはイミノエーテル誘導体を、また電子豊富オレフィンとしてケテンシリルアセタールやビニルエーテルあるいはエナミンを用い、触媒量のヘキサカルボニルタングステン存在下光照射を行うことにより、良好な収率で目的とする多環性インドール化合物が得られることを見いだした。
また本反応はアルキン末端に置換基を持つ基質を用いても同様に進行し、中間に生成する不安定型カルベン中間体からアルキル基の1,2-移動が進行し3位に置換基を有するインドール誘導体が得られることがわかった。

研究成果

• [文献書誌] T.Miura, N.Iwasawa: "Reactions of Iodinated Vinylidene Complexes Generated from 1-Iodo-1-alkynes and W(CO)_5・THF"J.Am.Chem.Soc. 124. 518-519 (2002)
• [文献書誌] H.Kusama, Y.Shiozawa, M.Shido, N.Iwasawa: "Tandem Cyclizations of Benzopyranylidenetungsten(0) Complexes with Electron-Rich Dienes for the Stereoselective Synthesis of Polycyclic Carbon"Chem.Lett.. 124-125 (2002)
• [文献書誌] H.Kusama, H.Yamabe, N.Iwasawa: "W(CO)_5-Amine Catalyzed Exo-and Endo-Selective Cyclizations of ω-Alkynyl Silyl Enol Ethers : A Highly Useful Method for the Construction of Polycyclic"Org.Lett.. 4. 2569-2571 (2002)
• [文献書誌] N.Iwasawa, T.Miura, K.Kiyota, H.Kusama, K.Lee, P.H.Lee: "An Efficient Method for the Cyclopentene Annulation onto α,β-Unsaturated Ketones : W(CO)_5(L) Catalyzed 5-Endo-Dig Cyclization of 6-Siloxy-5-en-1-"Org.Lett.. 4. 4463-4466 (2002)
• [文献書誌] H.Kusama, J.Takaya, N.Iwasawa: "A Facile Method for the Synthesis of Polycyclic Indole Derivatives : The Generation and Reaction of Tungsten-Containing Azomethine Ylides"J.Am.Chem.Soc. 124. 11592-11593 (2002)
• [文献書誌] K.Fuchibe, N.Iwasawa: "Generation of Reactive Species by One-Electron Reduction of Fischer-Type Carbene Complexes of Group 6 Metals and Their Use for Carbon-"Chem.Eur.J.. 9. 905-914 (2003)