研究概要 |
本研究では、特異的な多元素環状化合物として、upper rimに4個のリン酸エステル基やホスフィンオキシド基をカリックスアレーン骨格の4位に直接結合した多くの誘導体4〜8を初めて合成すると共に、得られた種々のテトラ(4-リン置換基)カリックス[4]アレーン誘導体5〜8のconformationは、IR, MASS, ^1H-,^<13>C-および^<31>P-NMRにより決定し、反応中に原料のテトラ(4-ブロモ)カリックス[4]アレン誘導体1〜4のConformationが変化していない事を確認した。 さらに、種々の金属塩化物の塩酸酸性下におけるクロロホルム中での抽出機能を検討した結果、ホスフィンオキシド基を持つカリックスアレンが塩化第2鉄だけを極めて高い選択性をもって抽出することが判明した。また、同じホスフィンオキシド基を持つカリックスアレンの中でも、cone型のconformationをもつ立体異性体がpartial cone型のconformationをもつ立体異性体よりも抽出機能が優れていることも判明した。 現在のところ、塩化第2鉄だけがUpper Rimにジフェニルホスフィンオキシド基が直接結合しているカリックス[4]アレーン誘導体5c、6c、7c、8cに抽出される理由については、必ずしも明確ではないが、塩酸水溶液の濃度を高めると一般的に抽出機能が高まる事などより、リン酸エステル基よりもジフェニルホスフィンオキシド基が塩基性度が高いため、リン原子に結合した酸素原子がプロトン化され易くなり、リン原子上に生成する正電荷とFecl_4-アニオンのイオン対形成が有利になるものと考えられる。さらに、n-Prエーテル基をもつ異性体の中でもcone型のconformationをもつ7cが、最も優れた能力を示すのはFeCl_4-アニオンの大きさがカリックス[4]アレンの同じ側にある4つのホスフィンオキシドのキャビテイの大きさにフイットするからではないと考えられる。
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