研究概要 |
本研究課題では,多元素環状化合物の環骨格への位置および立体選択的な官能基導入法を開発することを目的としている.多元素環状化合物として多様な生理作用を示す含窒素環状化合物に着目し,窒素原子のα位炭素上への位置および立体選択的な炭素官能基導入法を開発し,光学活性α位置換含窒素環状化合物の一般的合成手法を開発することを目的に研究を行った.我々は既に環状第2アミンの触媒的過酸化水素酸化による環状ニトロンの簡便で直接的な合成法を開発しており,併せて環状ニトロンに対する炭素求核剤のジアステレオ選択的付加反応による環状アミンα位への立体選択的官能基化法を開発に成功している.本年度はより効率的な手法の確立を目的として,環状ニトロンに対する炭素求核剤の触媒的エナンチオ選択的付加反応の開発を検討した. 光学活性ビナフトールを配位子とするチタン触媒が,環状ニトロンに対するケテンシリルアセタールの付加反応における不斉触媒として働くことを明らかにした.本触媒反応ではチタン錯体上のアキラルな配位子の選択が重要で,チタンに対して二座配位することにより安定でコンパクトなチタナサイクルを形成するカテコール類を配位子とする反応では,90%を超える高い選択性で相当する光学活性環状β-アミノ酸誘導体を生成する.本反応の適用範囲は広く,広範な環状アミンを原料として窒素原子α位への立体選択的官能基化が可能である. 環状アミンから環状ニトロンへの変換をより効率よく行うために,分子状酸素を酸化剤とする触媒的酸化反応の開発に取り組み,単純な有機分子であるフラビンを触媒とする第2級アミンの酸素酸化反応に初めて成功した.トリフルオロエタノール溶媒中,フラビン触媒と基質アミンに対して等量のヒドラジンの存在下,アミンは分子状酸素により効率よく酸化されて対応するニトロンを生成する.本反応は窒素分子と水のみを副生成物とするクリーンな反応である.
|