われわれは、ルテニウムカルボニルを触媒とするケトン(あるいはアルデヒド)、一酸化炭素、オレフィンの3成分による新しい型式のカルボニル化付加環化反応をすでに報告している。ベンゾフェノンやシクロヘキサノンのような単純なケトンは反応せず、α-ジケトンやα-ケトエステルあるいはピリジルケトンのように反応するケトンの隣接位にカルボニル基かイミノ基の存在が必須である。ケトンやアルデヒドと比べると一般的に反応性の低いエステルのカルボニル基が、カルボニル化付加環化に組み込まれた例はなかった。本年度、われわれは、ケトラクトン1をルテニウム触媒存在下、一酸化炭素、エチレンと反応させるとケトンで反応した付加体2とラクトンカルボニル基で反応した3が良好な収率で生成することを見いだした。生成物3はラクトンカルボニル、一酸化炭素、エチレンが[2+2+1]付加環化したものである。さらに、置換基の効果を検討したところ、ケトン近くの立体的なかさ高さが反応の選択性に重要であることがわかった。ケトンの近傍にtert-Buを置換すると3が選択的に生成することを見いだした。エチレン以外にも環状オレフィンや内部アセチレンとも反応することがわかった。反応性の高いエチレンや内部アセチレンの場合、一酸化炭素1気圧でも効率的に反応することがわかった。内部アセチレンの場合、オートクラーブを使う必要がなく、ガラス器具で十分に反応する。 この反応は、われわれの知る限りエステルのカルボニル基が触媒的カルボニル化付加環化した初めての例である。
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