研究概要 |
クロム(II)を用いる合成反応はその条件が穏やかであり、多くの酸素官能基を含む化合物の合成への適用が期待され、また、操作も簡便である。クロム(II)から電子不足の不飽和結合への1電子移動を契機とする反応(連続したアルドール反応・シクロプロパノール生成、立体選択的交差ピナコール型反応)の研究過程で、α,β-アセチレンケトンとアルデヒドとの反応による2,5-二置換フランの合成法を見いだした。反応は、α,β-アセチレンケトンへの1電子移動により生じたアレノラートラジカルの、反応系に加えた水による加水分解、2回目の1電子還元によるアルケニルクロム種の生成、アルデヒドとの反応、環化-フラン化により進行したと考えている。確かに、水を添加せず無水条件で反応を行なうと、Baylis-Hilman型の付加体が生じ、また、重水を加えると生成したフラン環に重水素が導入された。この手法を用いると、ケトンを側鎖に有するフランも合成できる。 また、多元素環状化合物の合成には結びつかなかったが、O-アセチルオキシムをクロム(II)で還元すると、クロムエナミンが発生することを見いだした。アルデヒド共存下にこのクロムエナミンを発せさせると、アルドール型付加反応が進行する。反応混合物を加水分解せず、還元するとγ-アミノアルコールが生成した。
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