研究概要 |
DBFOX-Zn(OTf)_2錯体触媒はジクロロメタンに不溶であるにも拘わらず、α-ブロモアクロレインとN-ベンジリデンアニリン-N-オキシドとの環状付加反応を効率的に触媒し、高立体選択性で環状付加体を与える(3h,85%,endo/exo=95/5;98% ee (endo))。従って、溶媒に僅かに溶けた錯体が反応を効果的に触媒していると考えられる。この顕著な不溶解性は、この錯体がジクロロメタン中で強く会合していることを示唆し、会合を解いて触媒を可溶化することができれば、著しく高い触媒活性が発現すると考えられる。そこで、(1)可溶化剤として各種アルコールを添加しての反応、(2)配位子の骨格中に会合を阻止する置換基を導入する、の2つを試みた。 DBFOX/Ph-Zn(OTf)2錯体に種々のアルコール性の添加剤を加えて反応を行った。無添加時と比較して2mol%の触媒存在下においてより高い活性が見られた。添加剤なし(スローアディション、1h):37%(endo : exo=86/14,78% ee (endo));MeOH添加(20equiv,スローアデイション、1h):59%(exo : endo=91/9,92% ee (endo)) TM-DBFOX/PhとZn(OTf)2とから通常通りの方法で錯体を調製した。調製開始から30分経過後ほぼ均一の溶液が得られた。重クロロホルム中で調製した溶液の1H NMR測定では錯体の形成が確認されたが、長時間攪拌すると次第に懸濁していく。また、調製した錯体を単離した後、空気中でしばらく保存すると再びクロロホルムには溶解しなかったことから、この錯体は単離せずに系中で調製する必要があることが明らかとなった。系中で調製した錯体を使用してα-ブロモアクロレインとニトロンとの環状付加反応を行った。DBFOX/Phを使用した場合と比較して反応速度に大きな増加は見られなかった。ジアステレオ選択性は顕著に向上し、室温条件下では最高のジアステレオ選択性で環状付加体が得られた(45min at rt,100%,endo only,97% ee (endo))。ほぼ均一に近い錯体溶液が調製されたものの、可溶化触媒の効果は顕著には見られなかった。今後は、オキサゾリン5位に導入する置換基を変えて、会合を阻止することのできる配位子を合成したい。
|