研究概要 |
1,3-双極性環状付加反応の不斉触媒化の研究の一貫として、不飽和アルデヒドを用いたニトロン環状付加反応を研究した。ジクロロメタン中で(R,R)-4,6-ジベンゾフランジイル-2,2'-ビス(4-フェニルオキサゾリン)、以下R,R-DBFOX/Phと略記、とZn(OTf)_2から調製した懸濁液はα-ブロモアクロレインとN-ベンジリデンアニリン-N-オキシドとの環状付加反応を効率的に触媒し、高立体選択性で環状付加体を与える(3h,85%,endo/exo=95/5;98%ee(endo))。溶媒に僅かに溶けた錯体が反応を効果的に触媒し、錯体触媒の反応溶媒への溶解度を高めると同時に、Zn(OTf)_2の難溶性の原因と思われるこの金属塩(およびR,R-DBFOX/Ph錯体)同士の会合を抑止するルイス酸触媒を入手できれば、格段に効果的な触媒反応が開発できると考えた。そのために、R,R-DBFOX/Ph配位子のオキサゾリン環の5位に4つのメチルおよびブチル基を導入した新規配位子を開発した。 これらの5位置換配位子を用いると、ジクロロメタン中短時間で可溶性の錯体が調製でき、α-ブロモアクロレインのみならずメタクロレイン、クロトンアルデヒドとの反応においても、5位無置換錯体よりも高い触媒活性と高いエナンチオ選択性を達成することができた。現在、これらの新しい触媒を用いたニトロン環状付加反応における触媒効率の改善をめざした研究を遂行している。
|