研究概要 |
ホスホノアクロレイン1は、その有用性が期待されているにも関わらず、従来開発がなされていなかった。我々は、2-エトキシ-1-ホスホノビニルカルボアニオンにメトキシメチルクロライドを反応させ、続いて酸分解することにより高収率で1を合成することに初めて成功した。 (1)1と電子供与基を有するオレフィン(フェニルビニルスルフィド、エチルビニルエーテル、スチレン等)とを室温または、二塩化エタン還流下でHetero Diels-Alder反応させることで、容易にジヒドロピランが高収率で生成することを見出した。 (2)また、1と電子供与基を有するアセチレン(エチニルメチルスルフィド、フェニルアセチレン等)と二塩化エタン還流下、反応を行ったところピラノピラン誘導体が良好な収率で得られた。合成したビラノピラン化合物のMeS基を酸化後、過熱脱硫した後、化合物1を反応させたところ、三つのリン酸エステル基を持つトリオキサ[4,4,4]プロペラン誘導体を全収率62%で得た。 このようにホスホノアクロレインは電子供与基を有するC-C多重結合化合物と[4+2]環化反応を行い、リン酸官能基を有する含酸素複素環化合物を与えることが明らかとなった。以上より、ホスホノアクロレインは合成化学上極めて有用な反応試薬となり、その用途の展開が益々期待される。また、工業化学的には難燃性基質等への応用も多いに期待される。
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