研究概要 |
1)5員環環状亜硫酸エステルである2-オキソ-1,3,2-ジオキソチオランと有機アミニウム化合物との反応において、4位がカルベニウムイオン性を帯びた遷移状態を安定化させる置換基としてビニル基をもつ、(4S)-4-(3-ベンジルオキシ-1-プロベニル)-2-オキソ-1,3,2-ジオキソチオラン(1)を合成した。化合物1にトリメチルアルミニウムを反応させたところ、SN2反応生成物である5-ベンジルオキシ-2-メチル-3-ペンテン-1-オールとSN2'反応生成物である5-ベンジルオキシ-4-メチル-2-ペンテン-1-オールが収率44%、生成比10:3で得られた。一方、同じ基質にトリエチルアルミニウムを反応させた場合には、SN2反応生成物とSN2'反応生成物の生成比は4:10に逆転した。この結果は、反応が電子的要因と共に立体的な因子の支配も受けることを示唆している。 2)6員環環状亜硫酸エステルである2-オキソ-4-フェニル-1,3,2-ジオキサチアン(2)のtrans-異性体とcis-異性体を合成した。それぞれにトリメチルアルミニウムおよびトリエチルアルミニウムをトルエンまたはジクロロメタン中で反応させたところ、対応するジオキサチオラン誘導体の場合と同様4位で選択的に反応し、3位に3級炭素原子をもつ1級アルコールである3-フェニルブタン-1-オールおよび3-フェニルペンタン-1-オールが61〜95%の収率で得られた。 3)化合物2のtrans-異性体とcis-異性体それぞれにジメチル(フェニルエチニル)アルミニウムを反応させた場合には、エチニル基がジオキサチアン環の4位を攻撃したことにより生成する、3,5-ジフェニル-4-ペンチン-1-オールが74〜89%の収率で得られた。なお、cis-2を用いた反応では、10%以下の収率ではあるが1-フェニル-1,3-プロパンジオールも生成した。一方、化合物2にジメチル(1-ペンチン-1-イル)アルミニウムを反応させたときには、塩化物イオンが化合物2の4位を攻撃した3-クロロ-3-フェニルプロパン-1-オールが副生し、目的とした3-フェニル-4-オクチン-1-オールの収率は低かった。
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