北里研究所で発見されたIL-6阻害剤マジンドリンAおよびBは、特異な3a-ヒドロキシフロインドリン骨格にジケトシクロペンテン部分がメチレン鎖で架橋した特徴的な構造を有している。我々は始めに、絶対配置を決定する目的で、すべての立体異性体の作り分け可能な不斉全合成ルートの開発を行い、初の全合成を達成した。そして最近、我々は大量合成に適した、より短工程で高立体選択的な第2世代の全合成ルートの開発に成功した。この第2世代の全合成における鍵反応は、最初の全合成過程で見つけた不斉酸化環化反応により容易に得られるキラルな3a-ヒドロキシフロインドリン分子を不斉リガントとして用い、キレーション効果を利用した立体選択的アシル化反応である。すなわち、ジケトシクロペンテン環上の4級炭素の選択的構築を、光学活性な3a-ヒドロキシフロインドリンから導いたエステル体を用い、3a-ヒドロキシフロインドリン部分と金属によるキレーション構造を形成することにより、酸クロライドとの反応面を制御したものである。そして、更にもう一つの鍵反応は、ジケトシクロペンテン部分をアリルシランを用いた分子内アシル化反応により一挙に構築する反応であり、計9ステップ、総収率はマジンドリンAが16%、Bが19%と短行程かつ高立体選択的な全合成ルートの確立に成功した。 更に、北里研究所で発見された細胞周期阻害剤ネオキサリンは、特異なスピロアミナール構造を有するインドールアルカロイドで、絶対並びに相対配置は未決定である。今回、構造的に興味深い本化合物の新規分子骨格構築法ならびに構造決定を視野に入れた全合成研究を検討し、ネオキサリンの最も特徴的な官能基であるスピロアミナール構造の構築はモデル化合物を用いて検討を行ったところ、目的とするスピロアミナール体の合成に成功した。
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