生物活性物質には含窒素複素環骨格を有するものが多く存在する。本研究では神経樹状突起伸長作用を有するエポラクタエンと、IL-6の産生を阻害することで骨粗鬆症の治療薬として期待されるノルゾアンタミンの合成研究を行った。エポラクタエンの合成研究としては、シリル化された二環性エポキシラクトンに、フッ化物イオンとMS4Aの存在下に酸フッ化物を作用させる直接的なアシル化を見出した。これにより、従来法より一行程短縮することができた。また、既に確立したルートによって種々の類縁体の合成を行い、広範な生物活性試験の結果、ヒト癌細胞に対して強力なアポトーシス誘導作用を有していることを見出した。特に、側鎖アシル部分の脂溶性が生物活性に大きく影響し、オクタダカノイル基を導入した類縁体は天然物より一桁近く高い活性を有していることを見出した。また、ノルゾアンタミンの合成研究では、既に確立した五環性アミナール骨格の環化において、立体化学の違いにより環化のモードが異なるという興味ある知見を得ることができた。すなわち、天然型ではゾアンタミン型の生成物を与えるのに対し、非天然型ではアミナール骨格でなく、スピロケタールに環化することを見出した。また、全合成研究としては、A環部分のエナンチオ選択的合成法を確立できた。引き続き、B環部分を構築するための方法論について検討した。その結果、エポキシシクロヘキセノンに低原子価サマリウムを作用させるとエノラートアニオンが発生することを見出した。今後、アルデヒドやエステルなどを有する基質を合成し、B環部分の合成に応用する。
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