水素結合の動的制御による刺激・環境応答性強相関ソフトマテリアルの構築

2001 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 13031009
• 研究種目: 特定領域研究(A)
• 研究機関: 東京大学
• 研究代表者: 加藤 隆史 東京大学, 大学院・工学系研究科, 教授 (70214377)
• キーワード: ソフトマテリアル / 水素結合 / 自己組織化 / 液晶ゲル / ミクロ相分離 / イオン性液体 / イオン伝導材料

研究概要

水素結合による自己組織体を新しいタイプの強相関ソフトマテリアルとして展開させることができた。特に、液晶ゲル(ミクロ相分離構造)および液晶性異方的イオン伝導体(ナノ相分離構造)について、構造制御およびその機能化を行った。
(1)水素結合によるミクロ相分離構造の制御と機能化
液晶ゲルを光散乱型の電気光学素子へ展開することに成功した。すなわち、ゲル化剤の濃度やその分散状態を適当に選ぶと、液晶が効率的にドメイン化されることで、液晶ゲルは高い光散乱状態を形成した。この光散乱状態は電圧の印加によって光透過状態へとスイッチングでき、偏光板や電極表面の処理を必要とせずに高輝度・高コントラストの表示を行うことができた。室温ネマチック液晶をアミノ酸誘導型水素結合性ゲル化剤によってゲル化した場合、ゲル化剤が形成するランダムなネットワーク構造により液晶のドメイン化が促進され、高効率光散乱が実現できた。ゲル化剤の選択や濃度の最適化による低電圧駆動化も達成できた。
さらに新しい異方的コンポジット形成手法として、均一に配向した液晶をゲル化剤の集合体形成の場として用いた場合に、液晶のテンプレート(鋳型)効果によって、液晶の配向している向きを反映した繊維状の分子集合体が形成されることを見出した。
(2)水素結合によるナノ相分離構造の形成とその機能化
イオン性液体は、近年、機能性溶媒として注目を集めている。しかし、汎用のイオン性液体を低次元的に自己組織化させて機能を発現させた例はない。我々は、一般的なイオン性液体と水素結合性液晶分子を集合させることにより、ナノ相分離構造を有する層状2次元液晶構造を形成させることに成功した。さらに、この自己組織体が異方的なイオン伝導を示すことを見出した。

研究成果

• [文献書誌] M.Yoshio, T.Mukai, K.Kanie, M.Yoshizawa, H.Ohno, T.Kato: "Layered Ionic Liquids : Anisotropic Ion Conduction in New Self-Organized Liquid-Crystalline Materials"Advanced Materials. 14・5. 351-354 (2002)
• [文献書誌] N.Mizoshita, K.Hanabusa, T.Kato: "Nematic Liquid-Crystalline Physical Gels Exhibiting Faster Responses to Electric Fields in Twisted Nematic Cells"Display. 22. 33-37 (2001)
• [文献書誌] M.Yoshio, T.Mukai, K.Kanie, M.Yoshizawa, H.Ohno, T.Kato: "Liquid-Crystalline Assemblies Containing Ionic Liquids : An Approach to Anisotropic Ionic Materials"Chemistry Letters. 320-321 (2002)
• [文献書誌] T.Kato, N.Mizoshita, K.Kanie: "Hydrogen-Bonded Liquid Crystalline Materials : Supramolecular Polymeric Assembly and the Induction of Dynamic Function"Macromolecular Rapid Communications. 22・11. 797-868 (2001)
• [文献書誌] 加藤隆史: "自己組織化でつくるソフトマテリアル -いろいろな分子を集めて、並べて、働かせる-"現代化学. 364・7. 24-32 (2001)
• [文献書誌] T.Kato: "Self-Assembly of Phase-Segregated Liquid Crystal Structures"Science. (in press). (2002)