高分子複合結晶の巨視的配列制御による機能の複合化と相分離リサイクル

2001 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 13031012
• 研究種目: 特定領域研究(A)
• 研究機関: 東京大学
• 研究代表者: 西 敏夫 東京大学, 大学院・工学系研究科, 教授 (70134484)
• キーワード: 結晶性 / ポリマーブレンド / 相互貫入球晶 / poly(butylene succinate) / poly(vinylidene chloride-co-vinyl chloride) / Poly(bytylene succinate-co-butylene carbonate) / poly(L-lactic acid) / 高分子複合結晶

研究概要

相溶性を示す分子構造が全く異なる結晶性高分子どうし及び結晶性/非晶性高分子の探索を行うと同時に、そのような結晶性ポリマーアロイの高次構造の研究および動力学的構造制御を研究することにより、機能性結晶性高分子の複合機能化・階層化を目的として研究を遂行した。例えば、複数種の高分子の相溶状態からの結晶化が同時に進行し、結晶化速度を同程度に制御した場合、それぞれの結晶が入り組んだ相互貫入球晶(Interpenetrated Spherulites, IPS)が形成されることを見出した。このような高分子複合結晶の高次構造の解析及び、高次構造形成機構を解明することを目的とした。以下に本年度得られた成果を示す。
Poly(butylene succinate)/poly(vinyliden chloride-co-vinyl chloride)(PBSU/PVDCVC)ブレンド系においてIPSが形成されることが分かっている。この系について、その高次構造、構造形成過程を走査型プローブ顕微鏡、共焦点レ-ザースキャン顕微鏡などを用いて解析した。その結果、PBSUとPVDCVCの球晶内のラメラはそれぞれ密と疎であり、ラメラ・フイブリル間の隙間の多いPVDCVC球晶内にPBSUのラメラが侵入していくことにより、IPSが形成されることが示された。また、ブレンド試料のPBSU球晶は正でも負でもない複屈折を示すが、これはラメラが螺旋状に成長していくからであることが分かった。
Poly(bytylene succinate-co-butylene carbonate)/poly(L-lactic acid)(PEC/PLLA)ブレンドが融点以上で相溶性を示す結晶性/結晶性ブレンドであることを発見した。この系の結晶化を光学顕微鏡により観察した。PLLA分率(φ_<PLLA>)0.1〜0.6、結晶化温度(T_c)60℃〜90℃で両成分の球晶が観察できた。更にこれらの条件下でのIPS形成の可能性について検討した。その結果、φ_<PLLA>0.1〜0.6、T_c60℃〜70℃でPEC球晶はPLLA球晶に接した後も成長を続けた。PLLA球晶の複屈折の変化から、PECのラメラがPLLA球晶に侵入し、IPSを形成していることが示された。

研究成果

• [文献書誌] H.Ohishi, T.Ikehara, T.Nishi: "Phase Morphology of Polystyrene-Polyarylate Block Copolymer/Polycarbonate Blends and Their Application to Disk Substrates"J.Appi.Polym.Sci.. 82. 2566-2582 (2001)
• [文献書誌] H.Ohishi, T.Nishi: "Application of Styrene-Acrylonitrile Random Copolymer/Polyarylate Block Copolymer as Reactive Compatibilizer for Polyamide and Acrylonitrile-Butadiene-Styrene Blends"J.Appl.Polym.Sci.. 83. 2300-2313 (2002)
• [文献書誌] S.Hirano, Y.Nishikawa, Y.Terada, T.Ikehara, T.Nishi: "Miscibility and Crystallization Behavior of Crystalline/Crystalline Polymer Blends. Poly(ester carbonote)/Poly(L-Lactic acid)"Polymer. J.. 34・2. 85-88 (2002)
• [文献書誌] S.Hirano, Y.Terada, T.Ikehara, T.Nishi: "Observation of Interpenetrated Spherulites by Confocal Laser Scanning Microscopy"Polymer J.. 33・4. 371-373 (2001)
• [文献書誌] 西 敏夫: "架橋の物理化学(Physical Chemistry of Crosslinking)"日本ゴム協誌. 75・2. 48-54 (2002)