研究概要 |
分子構造が全く異なる結晶性高分子どうしの混合系についてその相溶性、結晶化、構造形成を研究し、系統的な知見が得られた。また、特に生分解性結晶性高分子を中心に研究を進めたところ、構造制御により、生分解速度も制御できることが判明した。更に、ある種の条件下では、異種高分子の球晶どうしが相互に侵入し合う相互侵入球晶(Interpenetrated Spherulite, IPS)が生成することを見出し、その証明を行うことができた。これらの一連の研究は国際的にも注目され、2003年11月にバンコクで開催された第8回太平洋高分子国際会議の天然及びグリーンポリマーのセッションの基調講演に「生分解性高分子をベースとしたブレンドの構造と物性」というタイトルで選定され高い評価を受けた。新分野を開拓した研究シリーズとして認定された。 具体的には、生分解性高分子として、微生物合成系として、ポリ(3-ヒドロキシブチレート)(PHB)、ポリ(3-ヒドロキシブチレートーヒドロキシヴァレレート)(PHBV)、化学合成系として、ポリブチレンサクシネート(PBSU)、ポリエチレンサクシネート(PES)、ポリ(ε-カプロラクトン)(PCL)、ポリ(L-乳酸)(PLLA)、ポリエステルカーボネート(PEC)などが対象である。 このうち、特にPES/ポリエチレンオキシド(PEO)、PBSU/PEO、PHBV/ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、PBSU/ポリビニルフェノール(PVPh)などが相溶性を示すことを発見した。IPSに関しては、ナノメートルオーダーで本当に異種結晶のラメラどうしが相互侵入することを、原子問力顕微鏡による結晶化実時間測定で証明することができた。また、本特定領域の第1班の青井助教授(名大、応用分子生命科学)との共同研究により、PEC/PLLA系では、IPSの程度を制御すると、生分解リサイクルの速度を制御できるという興味深い知見が得られた。
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