研究概要 |
1.プロトン化TSPPのJ会合体とH会合体の形成制御 本研究では、あらかじめアニオン性ポルフィリン(TSPP)とカチオン性ポルフィリン(TMPyPまたはTAPP)を静電的に会合させ、その後に酸を加えることで、ブロトン化したフリーベースポルフィリンのH会合体を生成させた。TSPP-TMPyP会合体では僅かにJ会合体も生成するが、TSPP-TAPP会合体ではH会合体のみを選択的に生成することに成功した。 2.水溶性置換基をもたない種々のフリーベースポルフィリンのJ会合体形成 ポルフィリンの周辺置換基として、水溶性置換基をもたないフリーベースポルフィリンのJ会合体形成を検討した。フリーベースポルフィリンの塩化メチレン溶液に硫酸水溶液を滴下すると、塩化メチレンと水の界面に不溶性のポルフィリンJ会合体薄膜が生成することが明らかとなった。このJ会合体の薄膜は、ガラス基板上にすくいとることができる。どのJ会合体も、ソーレ帯とQ帯のそれぞれに対応し大きく長波長シフトしたJ吸収帯を示すが、ソーレ帯のJ吸収帯がほぼ480nm付近に現れるのに対し、Q帯のJ吸収帯はmcso位置換基に依存し650nmから760nmまでの広い範囲に現れる。一方、meso位フェニル基の3,5位や2,6位に置換基を持つポルフィリンの場合、ほとんどJ会合体は形成されなかった。これは、立体障害によるものと考えられる。これらのJ会合体の場合、プロトン化してカチオンになったポルフィリン環の対イオンは硫酸アニオンであり、ポルフィリンJ会合体の形成に必要な静電的安定化は、分子内のアニオン性置換基である必要はないことを示している。
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