研究概要 |
タンパク質の極限環境耐性における非共有結合性相互作用(とりわけ疎水性相互作用)の重要性を明らかにすることを目的として,以下の研究を実施した。 (1)高度好塩菌フェレドキシンの耐塩機構 高度好塩菌タンパク質は少量の水しか存在しないような環境においても機能することから,疎水性の有機溶媒中での利用が期待される。三角形平板状の特徴的な形態を有する高度好塩性古細菌Haloarcula japonica由来のフェレドキシン(Fd)は,[2Fe-2S]型クラスターを含む電子伝達タンパク質である。H.japonica Fdはほうれん草由来のFdに比べてアミノ末端が20残基程度長く,この領域がH.japonica Fdタンパク質の折り畳みと耐塩性に関与していることを明らかにした。 (2)中等度好熱菌3-イソプロピルリンゴ酸デヒドロゲナーゼの耐熱化 3-イソプロピルリンゴ酸デヒドロゲナーゼ(IPMDH)はロイシン生合成系の酵素の一つである。中等度好熱菌Bacillus coagulans IPMDH (BcIPMDH)に対して,高度好熱菌Thermus thermophilus IPMDH (TtIPMDH)の耐熱化戦略を導入することにより,BcIPMDHのさらなる耐熱化に成功した。すなわち,BcIPMDHは2量体構造をとるが,TtIPMDHに倣いサブユニット接触部位の疎水性を強化することにより,5〜20℃もの耐熱性の向上が観察された。また,BcIPMDHに含まれるループ領域のひとつにプロリン残基を導入することによっても,耐熱性の向上が認められた。また,サブユニット接触部位の疎水性強化とループ領域へのプロリン残基導入を組み合わせた場合,耐熱性が相加的に向上することが明らかとなった。
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