われわれは、等方性溶液の放冷でゲル化をおこす低分子化合物をゲル化剤と捉え、ゲル化剤の開発とゲル化機構の解明に取り組んできた。ゲル化剤によるゲル化は静電相互作用、水素結合、ファンデアワールスカなどの非共有結合的な相互作用によって自己会合がおこり、形成された分子集合体がさらに集合して階層化することで三次元網目構造をつくり溶媒を取り込み起こる。低分子ゲル化剤の特徴は、加熱時に容易に溶け放冷時に瞬時にゲル化すること、そして形成されたゲルは熱可逆的にゾル・ゲルの相転移を繰り返すことにある。ゲル化剤の中には数年間経過後も安定なゲルを形成するものもあるが、一般に生成したゲルは低分子化合物の自己集合体を基本としているので準安定状態にあり、長期間放置すると徐々に結晶へ転移してしまう。そのため結晶へ転移しない安定なゲルを形成するゲル化剤の開発は重要である。 本研究では、(1)水素結合などの2次的な相互作用を通して液体をゲル化するゲル化駆動機能と(2)ポリマーやオリゴマーは非晶性であり溶液中から結晶化しないという現象に着目し、これらの機能と現象を結合させることにより、結晶へ転移しない安定なゲルを形成するゲル化剤ポリマーの合成を行った。 シロキサンオリゴマーを非晶性部位として選び、ゲル化駆動機能を有するセグメントとして二重結合を導入した種々のオイルゲル化剤を別途合成し、ヒドロシリル化反応で結合させた。ゲル化駆動部位の分子間水素結合によリシロキサンオリゴマー間で自己会合を起こし、ゲル化の原因となる三次元網目構造が形成されるが、この三次元網目構造は従来のような単一の低分子化合物によって構成されていないので極めて安定なゲルになることがわかった。
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