研究概要 |
ブロック・グラフト共重合体の高機能材料としての有用性を保持しつつ、次のように環境への負荷が少ない物質循環型の複合高分子材料の設計法を探索している。基本となるコンセプトは異種高分子間に共有結合を作らず、水素結合等を用いて、外からの刺激によって可逆制御可能な非共有結合型複合体を作ることにある。今年度は次の2試料の調製とキャラクタリゼーションを行った。 a)ABジブロツク型 成分としてポリスチレン(S)、ポリ-4-トリメチルシリルスチレン(T)を選んだ。Sの片末端にスルホン酸基(-SO_3H),Tの末端にアミノ基(-NH_2)を導入した。双方をアニオン重合で合成し、単分散プレポリマーを得た。両ポリマーをTHF希薄溶液中でブレンドし、溶媒キャストにより薄膜を得た。フィルムをオスミウム酸で染色し、透過型電子顕微鏡(TEM)で観察したところ、60〜100nmのくり返し周期を持つ縞模様が見られた。試料の分子量(S, T共に約3万)を考えるとこのサイズはS分子とT分子が1:1で結合した複合超分子が作るミクロ相分離構造から予想されるドメインサイズより大きいが、ポリマーブレンドからのマクロな相分離構造とは明らかに異なるメゾスケールの規則構造である。 b)A-Bグラフト型 A成分にポリ-4-ビニルベンジルジメチルアミン(V), B成分にポリスチレン(S)を選んだ。ここでもまず単分散プレポリマーを合成した。Vにヨー化メチルをモノマー単位の1/10モル当量反応させ、部分的に4級化されたポリマー(A')を得た。一方Sの片末端にスルホン酸基を導入した。a)と同様の方法でフィルムを調製しそのバルク構造を観察したところ100〜300nmのくり返し構造が見られた。この構造も前項と同様、イオン結合により作られた超分子と結合していない2種のホモポリマーからのメゾスコピックな周期構造と見なすことができる。
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