本年度は超好熱始原菌Thermococcus kodakaraensisのreverse gyraseに関して研究を進めた。Reverse gyraseはATP依存的にDNAのpositive supercoilingを触媒するDNA topoisomeraseの一種である。Reverse gyraseが高温環境でのDNAの安定化に寄与すると考えられたため、多数の超好熱菌に関して、本酵素の存在が確かめられた。さらにデータベースに存在する全ゲノム情報を解析した結果、全ての超好熱菌ゲノムに存在し全ての常温菌ゲノムに存在しないORFはreverse gyrase遺伝子のみであることを見出した。これらの事実からreverse gyraseは超好熱菌の生育にとって必須であることが示唆された。そこで、reverse gyraseが超好熱菌の生育にとって必須であるかどうかを実験的に検証することにした。T. kodakaraensisのゲノム解析の結果、reverse gyrase遺伝子はゲノム上に唯一つ存在することが判明した。そこでT. kodakaraensisのtrpE欠損株を宿主とし、trpE遺伝子をマーカーとしてT. kodakaraensisのreverse gyrase遺伝子の破壊を試みた。この結果、tryptophan非要求性の形質転換体が複数得られ、またPCRやSouthern blot解析により、Tk-rgyが破壊されていることが確かめられた。様々な培養温度でΔrgy株と宿主の増殖特性を比較したところ、Δrgy株は全ての温度で宿主細胞よりも低い比増殖速度を示し、高温領域でその傾向が顕著となった。93℃ではΔrgy株の生育は観察されなかった。したがつて高温領域における生命維持にはDNA(ゲノム)のtopologyが重要であることが実験的に証明された。
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