生体系でポルフィリン類を活性中心に含む各種分子種の中でも光合成系は最も精緻な構造と機能を有する含ポルフィリンシステムとして知られている。これらのシステムは電荷分離過程を実行する活性中心の他にアンテナシステムとして知られるマルチポルフィリンシステムを有している。アンテナシステムは数十個のポルフィリンが反応中心を取り囲む様に組織的に配置された巨大分子システムで、高い効率で光エネルギーを集光し反応中心にエネルギーを移動する役割を担っている。本研究では、この光合成系アンテナシステムに範をとったポルフィリンの大規模組織体の構築を目指し、数個から最大20個程度までの複合ポルフィリン集合系の構築とその集光およびエネルギー移動メカニズムを明らかにすることを目的とした。 申請者らがこれまでの研究で見出した水素結合と配位結合の共同的分子認識系であるピラジン誘導体と[Zn・TPP(COOH)_2]錯体をポルフイリンの周囲に配置できる分子系を用いて自己組織化ポルフィリン9量体を構成し、この自己組織化系の構造が光エネルギーに対するアンテナ集光効果とエネルギー移動過程に及ぼす効果を検討を行い以下の知見を得た。 (1)結合様式の違いがエネルギー移動に影響を及ぼさないこと (2)連結部の鎖長変化によるポルフィリン間距離の変化とエネルギー移動効率に大きな相関がある。 さらに、上記9量体の加えて、アンテナポルフィリンを16個まで拡大した集合体3種類の分子設計とその合成を行い、アンテナポルフィリンの並列型配置と直列型配置によりアンテナ集光効果に違いが生じることを世界で始めて見出した。
|