研究概要 |
水素結合を利用したソフトマテリアルの創製は,新しいセンシング材料の観点から興味深い、当該年度の研究では,ソフトマテリアルの観点からテロメアDNA配列を用いたカリウム(K^+)インジケーターの開発を行った.染色体の末端に存在するテロメアDNAはグアニンリッチな繰り返し配列からなり,Na^+やK^+などのカチオンの存在より,Guanine quartet構造が安定化され,四本鎖を形成する.特にK^+はそのイオン半径がGuanine quartet間の空孔内に最もよくフィッティングすることから,この四本鎖構造を著しく安定化させことが知られている.当該年度では,この性質と蛍光共鳴エネルギー移動(FRET)を利用することにより,新規蛍光性K^+インジケーターの開発を試みた.ヒトテロメアDNAの21merのオリゴヌクレオチドの両末端に蛍光共鳴エネルギー移動(FRET)が可能な蛍光色素FAMとTAMRAを導入したオリゴヌクレオチド(Potassium Sensing Oligonucleotede : PSO)を構築した.K^+が存在しない状態では,PSOのFAMを励起するとFMAの蛍光が観察された.しかし,K^+が存在するとTAMRAの蛍光が観察されるようになった.これは,K^+によりGuanine quartetが誘起されPSOにおいてFAMからTAMRAへの(FRET)が起きたためであると推測された.PSOに種々の金属イオンを添加した際の蛍光変化について検討を行った結果,PSOのK^+に対する選択性は,Na^+の場合の43,000倍となり,これまでに例を見ない高い選択性が示された.ここで得られた結果は,水素結合型強相関構造に由来するものと考えられ,この原理を利用した新しい分析試薬への展開が期待される.
|