研究概要 |
分子配列にらせん構造を有するコレステリック液晶相と等方相との間に発現する青色相(Bluc Phase : BP)は、メゾスコピックスケールの三次元周期構造を有する特異な相である。その格子定数は可視光の波長オーダーであるため、BPは可視光に対してブラッグ反射を示す。また、BPにおける数10msオーダーの電気光学応答も報告されており、可視光の回折を電気的に制御する光変調素子への応用が期待できる。一方、低分子液晶中に分散させた光重合性のモノマーを光重合によって高分子ネットワークを形成させることで、特定の分子配列構造を熱的に安定化させることが知られている。 本研究では、BP中に分散させた光重合性モノマーを光重合させることによってBPの分子配列構造に適合したネットワークを形成させ、BPの分子配列を能動的に安定化させる。それにより、幅広い温度範囲にわたりBPを保持可能な(高分子ネットワーク/カイラルネマチック液晶)複合系を構築し、新規電気光学特性を示す液晶性ソフトマテリアルの開発を行う。 光重合性液晶モノマーとして、合成した2-mdhyl-1,4-phenylene bis{4-[6-(acryloyloxy)hcxyloxy]benzoate}(MPBAHB)または、メルク社製RM257を用いた。低分子液晶としてフッ素系ネマチック混合液晶であるJC-1041XX(チッソ(株))及び4-cyano-4'-pentylbiphenyl(5CB)を等モル比で混合したものを用い、カイラルドーパントとしてZLI-4572(Merck)を用いた。また、光重合開始剤として2,2-dimethoxy-2-phenyl-acetophenoneを用いた。(モノマー/液晶/光重合開始剤)混合系のBP相で、UV光を照射することで、複合系を調製した。UV照射前後の複合系の偏光顕微鏡観察及び反射スペクトル測定を行い、BPの存在を確認した。 UV照射前(a)及び照射後(b)の複合系の種々の温度における反射スペクトルおよび偏光顕微鏡観察の結果、BPの発現温度範囲は重合前の複合系において2.2Kであったが、重合後の複合系において2.8Kとわずかながら増加した。これは、高分子ネットワークの形成によって、BPの分子配列構造が安定化されたためだと考えられる。モノマーの構成成分として、液晶性ジアクリルモノマーと非液晶性モノアクリルモノマーを用いることにより、BP相の温度幅を8Kまで拡大できることが明らかとなった。
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