耐熱性タンパク質に疎水的に包埋したポルフィリン、ポルフィリンとサブパーツからの水素結合によるポルフィリンキャップの構築で、特に2次結合力の役割と新しい可能性を示す成果を得た。ポルフィリンの構造および疎水性と組織体生成の相関をその可逆(リサイカブル)性も含め明らかにするとともに、ポルフィリン部への酸素分子の結合・脱着による酸素の選択輸送を実証することを目的とした。 (1)A01班内の共同研究として、中村(東工大)らの微生物産生の耐熱性のタンパク質キシラナーゼに、我々の全合成ポルフィリンを疎水相互作用により包埋させたポルフィリン組織体を構築した。ポルフィリン周りの疎水環境を明らかにし、高温でも可能な酸素結合とキシラナーゼ触媒活性の両者を観測できた。この手法は、機能を兼ね備えたヘムタンパク質群の創成を可能にする。 (2)環状の分子サイズと適度な剛さからカリックス[4]アレーンをキャップ枠組みとして選択することで、アッパーリム側に4つのアルコール基をもつ誘導体、ポルフィリン骨格としてテトラo-ピリジルポルフィリンの組合せが、最も安定な二分子対を形成した。NMR、IR等から、二分子対のポルフィリン面上疎水キャップは4点での水素結合により構成され、適切な酸素分子の結合席となり得た。 (3)テトラフェニルコバルトポルフィリン高分子錯体薄膜を多孔膜上に膜厚80mmで作成した。この膜は室温、酸素加圧下におくことで、極めて迅速な酸素結合・脱着を繰り返した。この薄膜の酸素透過係数は供給圧が減少するにつれて著しく増大し、(酸素/窒素)選択比100超の極めて高い酸素透過選択性を示した。同条件で空気供給では、透過気体の酸素濃度90%と、薄膜内に固定されたコバルトポルフィリンでの、むしろ弱い酸素結合力が効果的な酸素の輸送現象となりうることを定量的に解析できた。
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