研究概要 |
低分子RNAと2種類のタンパク質からなるグラム陽性細菌のシグナル認識粒子SRPの全体構造の解明を目指し、枯草菌SRP RNA(scRNA)のドメインI, IIへの結合タンパク質であるヒストン様タンパク質HBsuとRNAの結合様式の詳細を解析した。X6Hisタグを付加して精製したHBsuは、ホモダイマーとなり、非特異的にDNAに、結合した。しかし、HBsuは、枯草菌SRP RNAであるscRNAと特異的に結合する結果を得た。HBsuは、α-β-β-β-αモチーフを有し、ダイマーとなって、サドル型構造という新規のRNA結合構造を形成する。さらに、HBsuはRNA結合タンパク質にみられるRNPモチーフの相同配列を有しているが、変異導入実験から、この配列もRNA結合特異性をきめる因子ではないことが明らかとなった。HBsuのscRNAの結合に関与する構造特異性を調べるため、パラログであるYonNタンパク質の変異体を用い、scRNA結合能の比較を行なった。YonNは、HBsuのホモロジー検索から、HBsu同様分子量約10KDa、92アミノ酸からなるタンパク質であることが特定された。YonNはRNA bindingモチーフやアーム内のアルギニン残基など、核酸への結合に関与する特徴を有していたが、scRNAへの結合はほとんど示さなかった。このYonNにHBsu型への塩基置換変異を導入し、scRNA結合能の増加を調べた。scRNAの認識に関与すると思われるストランド領域とアーム領域の1残基を置換した変異型YonNを用い、ゲルシフトアッセイによりscRNAとの結合能を調べたところ、アーム領域内の変異体で結合能が上昇した。このアーム領域に存在する領域のSerが残基がscRNAとの特異的結合に関与していた。これらの結果を基に、HBsuとscRNAの結晶化を進めている。
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