1.ブタのZPBおよびZPCの三次構造解析 透明帯を調製する際、凍結卵巣の固まりを低温室内でスライスする過程は重労働であるが、今回、これまで1時間かかっていた作業を、氷冷しつつ5分で終了し得る電動式スライサーを試作した。また、これまではステンレスメッシュにトラップした透明帯を水中で加熱し溶解していたが、透明帯糖タンパク質に僅かに存在するSH基が引き金になってSS交換反応が起こりポリマーが形成されることがわかった。そこで酢酸で可溶化後アンモニアで中和しポリマーの形成を抑制する調製法を工夫した。これらの改良法で効率良く透明帯糖タンパク質を得ることが可能となった。 このようにして得た透明帯糖タンパク質混合物をエンド-β-ガラクトシダーゼ、β-ガラクトシダーゼおよびβ-ヘキソサミニダーゼの3酵素で同時消化し、レクチンブロットで充分に消化されていることを確認後、逆相HPLCで3成分に分別した。主成分のZPBとZPCについてハンギングドロップ法で結晶化を試みている。 2.ブタとウシ透明帯タンパク質のバキュロウィルスを用いた発現と構造機能解析 昨年度までにバキュロウィルス/sf9昆虫細胞発現系を構築したブタとウシ透明帯糖タンパク質ZPA、ZPB、ZPC、ウシZPBの糖鎖付加部位変異体およびウシZPAのドメイン欠失変異体の大量発現条件を検討すると共に、発現タンパク質の精子結合活性を調べた。いずれのタンパク質も糖鎖が付いているせいか、発現量は少なく更に条件を検討中である。また、発現させたブタ透明帯タンパク質には、高マンノース型糖鎖が付加しているため、ブタ精子は結合せずウシ精子が結合することがわかった。
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