大腸菌の膜結合性コハク酸ユビキノン酸化還元酵素複合体(SDH)の立体構造をX線結晶構造解析で解明し、その構造と機能の関係を明らかにするために、これまでに得られているSDH結晶の質の改良と再現性の向上を行い、同時にX線回折実験を行った。結晶化のためのサンプルは、大量発現系を構築した大腸菌を培養、その内膜中に存在するSDHを界面活性剤スクロースモノラウレートで可溶化し、ルブロール存在下でカラム精製を行い調製した。結晶は、このようにして精製したサンプルの界面活性剤を、ポリエチレングリコールアルキルエーテル系とアルキルマルトシド系の界面活性剤を適当な比率で混合したものに置き換え、塩化アンモニウムや酒石酸ナ卜リウム等の塩類の存在下、ポリエチレングリコールを沈澱剤に使うことで、再現性良く得られるようになった。また、共存する塩の種類によって、いくつかの異なる結晶形が得られた。これらの結晶を液体窒素で凍結させ、X線源として放射光を使ってX線回折実験を行い、それぞれについて格子定数や空間群を決定することができた。しかし、いずれの結晶形も原子レベルでSDHの立体構造を解明するには、分解能が十分でなく、最も高いもので3.5Å分解能程度であった。現在、分解能を向上させるため、結晶化に使う試料の化学的・物理的純度を高めると同時に結晶化条件の最適化を行つている。
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