研究概要 |
平成14年度は、以下のことを検討した。ヒトとマウスのDicerとPIWI様蛋白に対応するcDNAを取得した。dicerはゲノム中に1コピーで、piwi様eIF2Cは4コピー存在した。ヒトDicerとEIF2C1全長について、GST融合とTRX融合での大腸菌発現系を検討したが、不溶性であった。一方、バキュロウイルス発現系ではヒト6xHis-Dicerは可溶化し、6xHis-EIF2C1は不溶化した。現在、結晶化用に全長Dicerを大量調製中である。また、古細菌Sulfolobus tokodaiiのPIWI蛋白の大腸菌発現系を検討したが、これも不溶化した。平成13年度に調製したDicerの6xHis-RbD(RNaseIIIドメイン(Rb)+二本鎖RNA結合ドメイン(D))は可溶性であったが、不活性体を含んでいた。不活性の原因は二本鎖RNA結合活性のDに由来していたので、次にRbのみの発現を検討した。Rb-6xHisはMonoQカラム上で均一でRNaseIII活性を有していた。結晶化スクリーニングの結果、リザーバー条件が25%エチレングリコールで結晶が得られ、R AXISで測定したところ、単位格子の角度がα、β、γ=90°、3軸の長さa=68,86Å、b=70,86Å、c=189,60Åの斜方晶で、空間群がP222であると分かった。現在、好熱菌Aquifex aelicus由来のRNaseIIIをサーチ分子として分子置換法で構造決定する作業を行なっている。また、RbDのRbでは活性中心のはずのGlu残基がPro残基に置換しているが、それを逆転させたP1730Eは野生型RbDと同程度の活性しか示さなかった。この結果は、現行のRNaseIII触媒活性モデルと合致せず、活性中心がGlu残基で説明できないことを意味している。
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