細胞の活動の中核を担う蛋白質は、特定の立体構造に折りたたんで(蛋白質のフォールディング)はじめて機能を発揮する。しかし、蛋白質がどのようにフォールディングするのか、について我々はまだまだ知らないことばかりである。ただ、この蛋白質のフォールディングにおいて、分子シャペロンが主役として活躍していることはわかってきた。分子シャペロンの中でも、シャペロニンGroEL(Hsp60)はすべての細胞に必須のシャペロンであり、これまで多くの研究がなされている。その結果、作用機構の概略はわかったと言えるが、変性蛋白質をどのようにして認識しているのか、かご型蛋白質であるシャペロニンが変性蛋白質をかごの中に取り入れる仕組みはどうなっているのか、など基本的だが重要なことがわかっていない。 最近の我々の研究の結果、GroELの作用機構サイクルの中で非常に重要と思われる中間体を速度論的に同定した。そこで、本研究では、この中間体に相当するGroEL複合体の立体構造を明らかにすることを第一の目的とした。14年度の成果は以下の通りである。 好熱菌Thermus themophilusのシャペロニンの[GroEL-ADP-substrates-GroES]複合体のX線結晶構造解析を行った。その結果、in vivoの状態を反映するシャペロニン複合体の構造をはじめて明らかにした。また、in vivoでの基質タンパク質の同定も同時に行い、20個あまりを決定した。
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