研究概要 |
能登半島九十九湾には、マシコヒゲムシと呼ばれる有鬚動物が生息する。マシコヒゲムシは、食べることを放棄し、口も消化管も肛門もない世界的にも貴重な動物である。マシコヒゲムシは数千メートルの深海の熱水噴出孔付近に生息するハオリムシと同じ仲間であり、ハオリムシが硫化水素を酸化して得られる化学エネルギーを利用して炭酸固定を行う化学合成細菌を持つことから、マシコヒゲムシも類似した細菌を有し、それがつくり出す有機物を栄養源にしていると考えられている。本研究は、宿主には酸素、共生細菌には硫化水素を供給するという哺乳動物のヘモグロビンとは異なる機能を有する巨大ヘモグロビンの構造機能相関を解明することを目的として、本年度は立体構造解析に必要な結晶の調製を試みた。マシコヒゲムシの巨大ヘモグロビンの分子量は約45万であり、巨大であることから、Sephacryl S-300(50mMTris-HCl, pH8.0+0.2MNaClで平衡化)によるゲルろ過を2回行なうことにより、電気泳動的均一にまで精製することができた。精製したヘモグロビンを76mg/mlまで濃縮した後、HAMPTON RESEARCH社の結晶化スクリーニングキットによりハンギングドロップ蒸気拡散法により結晶化条件を検討したところ、0.1M Imidazole pH7.0+1.0M Sodium Acetate trihydrateで再現よく結晶を得ることに成功した。さらに、蛋白溶液と結晶化バッファーの混合率、pH、蛋白質濃度等の条件を検討したところ、種々の型の結晶を得ることに成功し、現在は、シツテングドロツプ法での結晶化を試みている。
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