研究概要 |
リボソームの大亜粒子構造は2.4Åの分解能で解析されているが、粒子中の翻訣反応駆動部となる可動性機能部位(GTPaseセンターとも呼ばれる)の構造は解明されていない。この部位は、L7/L12,L10,L11タンパク質と一部のrRNA部位から構成されている。本研究の目的は、高度好熱性細菌Thermus thermophilusの各タンパク質を別々に大腸菌中で大量発現させ、複合体をin vitroで再構成させ、この部位の結晶構造を明らかにすることである。本年度は、各タンパク質の発現プラスミドの構築と発現タンパク質の精製・機能解析を行った。各タンパク質遺伝子をPCRによる増幅後、pETベクターに組み入れ、大腸菌による発現を試みた。その結果、L7/L12とL11はよく発現したが、L10は発現せず、GST-L10の融合タンパク質として発現させる必要があった。GST-L10はL7/L12と結合し、複合体を形成した。この複合体からGST部分を酵素的に切断後L10.L7/L12複合体を調製するととが出来た。L10.L7/L12とL11はT. thermophilus 23S rRNAの1070部位断片、および大腸菌rRNAの相同部位と強く結合した。また、得られたタンパク質複合体の機能をさらに解析するため、大腸菌リボソームからL10.L7/L12とL11タンパク質を特異的に遊離させ、その部位に本研究で得られたT. thermophilusタンパク質を結合させ、得られたハイブリッド型リボソームの機能を解析した。その結果、そのハイブリッドリボソームは大腸菌翻訳因子EF-G依存の高いGTPase活性を示した。以上、T. thermophilusリボソームのGTPaseセンターを構成するL7/L12,L10,L11を、機能を保持した状態で大量調製することに成功した。次年度はrRNAドメインを含め複合体の結晶作用と構造解析を行う予定である。
|