本研究の目的は蛋白質/核酸複合体を電子顕微鏡レベルで構造解析することである。今年度は細胞の癌化に関する因子(RCK)とmRNAとの結合を明らかにした。RCKはP54とも言われBリンパ球由来のリンパ腫からクローンされた遺伝子産物の蛋白質で、いわゆるDEAD Box蛋白として知られている。DEAD Box蛋白は一般にヘリカーゼ活性を持つと考えられており、またmRNAとも相互作用をするのではないかと考えられている。しかし、実際にはヘリカーゼ活性とはどのようなものであるのか、また、mRNAとはどのように作用するのかなど明らかになっていないこれを本研究において形態学的側面から明らかにした。一般にmRNAは畳み込まれた状態で観察されるが、RCKを添加し10分間incubationするとmRNAはほどけ、直線化することがわかった。このようにヘリカーゼ活性とは形態的には一本鎖を主体とする本来のmRNAの姿にほぐすことであることがわかった。したがって、核から運ばれてきたmRNAをリボソームに入りやすくするために働くと考えている。このようなヘリカーゼ活性に特異性はなく様々なmRNAについても認められた。しかし、癌因子であるc-mycのmRNAに対しては特異的にRNase活性を示すことがわかった。すなわち、10分間以上incubationするとc-mycのmRNAは一定の長さで切断される。つまり、RCKはc-mycに対しhelicaseとRNAse活性を示す。RNAse inhibitorを加えることにより、RNAse活性は抑制されるがhelicase活性は残っていた。
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