Vibrio alginolyticusの極毛モーターはNa^+駆動型で、菌体内外のNa^+の電気化学ポテンシャル差を利用して回転力を発生し。このモーターのトルク発生に必須の構成因子として、PomA、PomB、MotX、MotYが同定されている。我々は、PomA/B複合体及びPomAの精製とこれらのプロテオリポソーム中への再構成を行った。この際、界面活性剤としてβ-octylglucosideを用い、PomAのN末端に付加したヒスチジンタグを利用して精製を行った。しかし今回、過去と同様の方法で何度か精製を試みたところ、複合体の回収率が非常に低いことが判明した。また、PomBのC末端にヒスチジンタグを付加しPomA/B-His_6を発現する系で精製を試みたところ、PomBを高純度で回収することができたが、PomAの回収率は非常に低く、複合体は得られなかった。そこで、PomA/B複合体をより効率よく精製するために、使用する界面活性剤の検討を含め、精製系の再検討を行った。 いくつかの界面活性剤でPomAB複合体の安定性を再検討したところ、Sucrose monocaprateを用いると、これまで用いてきたβ-octylglucosideに比べPomAとPomBの解離が少ないことが分かった。そこで、Sucrose monocaprateを用いてPomA/B-His_6を発現する系での精製を試みた。その結果、supeose6カラムでのゲル濾過で、マーカーであるチオグロブリンより早い約900kDaに対応する位置に溶出されるPomA/B複合体と推定されるデータを得ることができた。このフラクションを再分離しても、再び、同じ位置に溶出されることから、ここで得た複合体は安定した構造体であると考えられる。また、PomB単独でも約260kDaに対応する位置に溶出された。以上のことから、これまでに考えられていた以上に大きな複合体をPomAとPomBが形成する可能性が示唆された。これを補足する意味で、複合体をショ糖密度勾配遠心法で分離した結果、この複合体が巨大な見かけの分子量をもつ構造体であることを確認した。
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